カサリノだけが
知っている
てっぺんからの光が、海の色を一層青く染める午後。今にも転がりだしそうな岩石も、静かに日向ぼっこしています。岩がもたれ合い、生き物が寄り添うぐしちゃん浜の景勝は、一体どのように生まれたのでしょう。ゆらゆらと波に揺られる小さな緑藻、カサノリだけがそれを知っているのかもしれません。
目を閉じ、まるで母の胎にいるかのように心地よく揺れるカサノリは、小さなその葉を広げ、ただただ日の光をほおばっています。するとそこへ、無邪気に追いかけっこする熱帯魚がやってきました。あっちへ行きこっちへ行き、すばしっこく駆け回る魚たちを、クスクスっと笑ったかのように揺れたカサノリ。5億年という途方もない前から、変わらず生き続ける小さな緑は、そんな時間を感じさせないほど愛らしく微笑むのです。